犯罪被害者支援のあゆみ
世界の犯罪被害者支援のあゆみ
第 1 期 : 1960年代 ~ 経済的支援の強調 ━ 英米を中心に犯罪被害者補償制度の確立
1964 年 1 月 |
〜 |
ニュージーランド |
1965 年 8 月 |
〜 |
イギリス |
1976 年 |
〜 |
カリフォルニア州 |
第 2 期: 1970 年代 ~ 精神的・実際的支援の必要性 ━ 民間被害者支援団体の誕生
1974 年 |
: |
イギリスの BVSS ~ 1979 年に Victim Support |
1975 年 |
: |
アメリカの NOVA ( National Organization for Victim Assistance ) |
1976 年 |
: |
ドイツの 「 白い環 」 ( Weisser Ring ) |
第 3 期 : 1980 年代 ~ 刑事手続における「2次被害」の表面化 ━ 刑事司法機関の反省・対策
- 刑事手続において被害者は「忘れられた存在」 ( forgotten person )</li>
- 刑事司法機関による被害者への配慮と、刑事手続への被害者の関与
1982 年 |
: |
アメリカの犯罪被害者及び証人保護法 |
1985 年 |
: |
国連の「犯罪被害者と権力の濫用の被害者に関する司法の基本原則宣言」 |
1987 年 |
: |
ヨーロッパ評議会の「刑事手続における被害者の地位と被害者援助に関する勧告」 |
第 4 期 : 1990年代 ~ 犯罪被害者の保護と地位の向上
1. 行政の運用努力による被害者支援~行政サービス
① 警察 |
: |
性犯罪被害者への特別の配慮、捜査・裁判等に関する情報提供等 |
② 検察 |
: |
被害者への情報提供、証人尋問の限定、被害者の意見の尊重等 |
③ 裁判所 |
: |
被害者・証人用待合室の整備、証人付添い、スクリーン使用・ビデオリンク方式の証人尋問 |
④ 保護観察所 |
: |
重大犯罪受刑者の刑の執行内容、釈放時期、釈放後の住所などの情報提供 |
2. 法整備
アメリカの一例
1990 年 |
: |
ストーキング法(カリフォルニア州) |
1994 年 |
: |
メ―ガン法(ニュージャージー州)など |
イギリスの一例
1997 年 |
: |
性犯罪者法~性犯罪者の氏名・住所等の警察への告知義務 |
1997 年 |
: |
嫌がらせ行為防止法~ストーキング対策 |
1998 年 |
: |
犯罪と秩序法~少年に対する損害回復命令 |
1999 年 |
: |
少年司法及び刑事証拠法~証人保護に関するビデオリンク方式の証人尋問等 |
2000 年 |
: |
刑事裁判所(量刑)権限法~損害賠償命令(Compensation Orders)等 |
第 5 期:2000年代~犯罪被害者施策の総合的推進
☆ |
アメリカ~2004年ジャスティス・フォー・オール法 (The Crime Victims’ Rights Act) |
☆ |
ドイツ~2004年刑事手続における被害者の権利を改善する法律 |
☆ |
韓国~2004年犯罪被害者基本法 |
☆ |
イギリス~2004年ドメスティック・バイオレンス、犯罪及び被害者法 |
☆ |
日本~2004年犯罪被害者等基本法 |
わが国の犯罪被害者支援のあゆみ
- 1958年
- 刑法及び刑事訴訟法の一部改正~暴力事犯のための証人等威迫罪の新設、証人尋問の際に証人が圧迫を受けるときの被告人退廷規定の新設
- 1980年
- 犯罪被害者等給付金支給法の制定(1981年1月1日施行)
-
犯給制度の実現に向けては、当センター大谷實理事長が尽力した。
その様子は映画「衝動殺人 息子よ」(監督:木下恵介・1979年)でも描かれている。
同映画で、犯罪被害者等に対し、国が補償する制度を創設するべきとの持論を展開する大学教授中谷勝(加藤剛)は、大谷理事長をモデルとしている。
- 1991年
- 犯罪被害給付制度10周年記念シンポジウムの開催~欧米の動きに触発
- 1996年
-
警察庁の『被害者対策要綱』~
① |
被害者への情報提供 |
② |
相談・カウンセリング体制の整備 |
③ |
捜査過程における被害者の負担軽減 |
④ |
被害者支援要員制度 |
⑤ |
被害者の安全の確保 |
⑥ |
関係機関・支援団体との連携など |
- 1998年
- 全国被害者支援ネットワーク誕生
- 1999年
- 全国被害者支援ネットワークの『犯罪被害者の権利宣言』
- 犯罪捜査規範の改正~被害者等に対する配慮、情報提供、被害者保護等
- 法務省の被害者等通知制度
-
いわゆる組織犯罪対策三法の公布~「刑事訴訟法の一部を改正する法律」
証人尋問の際における証人やその家族が脅迫・威迫を受けるおそれがあるとき、
証人の住居等の尋問制限、証拠開示の際における証人の安全に対する配慮
- 児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護に関する法律
- 2000年
-
刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律(刑訴法等改正法)
① |
証人の負担軽減のための措置(証人尋問の際における証人の付添い、スクリーンの使用による証人尋問、
ビデオリンク方式による証人尋問、ビデオリンク方式による証人尋問の録画の利用) |
② |
いわゆる性犯罪の告訴期間の撤廃 |
③ |
被害者等による心情その他の意見の陳述 |
④ |
検察審査会の審査申立権者の範囲拡大 |
-
犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律
(犯罪被害者保護法)
① |
公判手続の傍聴 |
② |
公判記録の閲覧及び謄写 |
③ |
刑事和解 |
- ストーカー行為等の規制に関する法律
-
少年法の一部改正
① |
被害者等の意見陳述
| |
② |
被害者等通知制度
| |
③ |
記録の閲覧・謄写
| |
- 児童虐待防止法~従来の児童福祉法による対応の改善(2004年改正)
- 2001年
- 出所情報の通知制度の導入
- 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(2004年改正)
-
犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律
① |
支給範囲の拡大(重傷病給付金の創設,遺族給付金に対する被害者負担額の付加,障害給付金の支給範囲の拡大~14級(18万円)) |
② |
給付基礎額の引き上げ(最高額は平均37%;遺族給付金1573万円・障害給付金1849.2万円、最低額は約44%;遺族給付金320万円・障害給付金482.4万円) |
③ |
警察による援助の措置の促進 |
④ |
民間の被害者援助団体の活動促進 |
- 2004年
-
犯罪被害者等基本法
① |
国・地方公共団体・国民の責務(第4条、5条、6条) |
② |
連携協力(第7条) |
③ |
犯罪被害者等基本計画の策定(第8条) |
④ |
相談及び情報の提供等(第11条) |
⑤ |
損害賠償請求・給付金支給の援助・充実(第12条、13条) |
⑥ |
保健医療・福祉サービスの提供(第14条) |
⑦ |
安全確保(第15条) |
⑧ |
居住・雇用の安定(第16条、17条) |
⑨ |
刑事手続への参加の機会の拡充(第18条) |
⑩ |
保護、捜査、公判等の過程における配慮・国民の理解(第19条、20条) |
⑪ |
民間団体の支援(第22条) |
⑫ |
犯罪被害者等施策推進会議の設置(第23条~30条) |
-
総合法律支援法の制定
日本司法支援センター(法テラス)の創設
犯罪被害者等が刑事手続に適切に関与するとともに、犯罪被害者等が受けた損害又は苦痛の回復又は軽減を図るための制度その他の犯罪被害者等の援助に関する制度の利用態勢の充実
- 2005年
-
犯罪被害者等基本計画の策定
☆5つの重点課題
① |
損害回復・経済的支援等 |
② |
精神的・身体的被害の回復・防止 |
③ |
刑事手続への関与拡充 |
④ |
支援等のための体制整備 |
⑤ |
国民の理解の増進と配慮・協力の確保 |
- 2006年
- 犯罪被害者等施策推進会議
- 2007年
-
更生保護法の制定
① |
保護観察対象者に犯罪被害者等の心情等を伝える制度の導入 |
② |
仮釈放等の審理において犯罪被害者等の意見等を聴取する制度の導入 |
-
犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律刑訴法
犯罪被害者等保護法
民訴法の改正:被害者参加制度、犯罪被害者等の情報保護、損害賠償命令、訴訟記録の閲覧・謄写範囲の拡大
-
児童虐待防止法・児童福祉法の一部改正
要保護児童等に関する関係機関相互の情報交換・支援内容の協議に係る「要保護児童の対策地域協議会」設置努力義務
-
DV 防止法の改正~市町村における基本計画策定の努力義務化
配偶者暴力相談支援センターの業務の拡充
保護命令制度の拡充
- 2008年
-
犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律の一部を改正する法律の制定
(1) |
休業を余儀なくされた場合の重傷病給付金の加算(120万円を限度)の創設 |
(2) |
重度後遺障害者(1級4000万円)・遺族(最高額3000万円)に対する給付額の増額 |
-
オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律
*要介護の障害者に3000万円を限度として給付
- 少年法の一部を改正する法律
- 犯罪被害者等保護法・総合支援法一部改正~被害者参加人のための国選弁護制度
- 2010年
-
刑法・刑事訴訟法の一部改正~人を死亡させた罪で死刑にあたる罪
→ 公訴時効の廃止(殺人、強盗殺人、強盗強姦致死など)
- 2011年
-
第2次犯罪被害者等基本計画の見直し
- 犯罪被害者への経済的支援のあり方~犯給制度の改正か、あらたな制度か。
- 損害賠償命令の見直し
- 2016年
-
第3次犯罪被害者等基本計画の見直し
- 地方公共団体における犯罪被害者支援の充実
- 犯罪被害者等を支える機運の醸成
- 被害が顕在化しやすい犯罪被害者等への支援
- 被害児童に対する国費による専門的治療等
- 犯罪被害者等に対する中長期的支援
作成・奥村正雄副理事長